人工知能の導入で介護業界の人手不足が解決される可能性

少子高齢化が叫ばれる昨今、2040年には、65際以上の高齢者人口が3,868万人にものぼると言われています。その一方、介護業界では人手不足が年々深刻化。そのため、政府は、介護職員の不足を食い止める打開策として、介護ロボットの導入や開発費用を積極的に支援する動きを打ち出しはじめています。

そこで今回は、「人工知能キャラクター優子ちゃん」の開発を手がける、Shannon Lab株式会社にお邪魔して、代表取締役、田中潤(たなか・じゅん)さんにお話を伺ってきました。『AI(人工知能)は人の仕事を奪う』などと言われることが多いなか、今後の日本の未来において、AIがどのような役割を果たすのでしょうか。

<話を聞いた人>

田中 潤(たなか・じゅん)さん

Shannon Lab株式会社代表取締役。カリフォルニア大学リバーサイド校博士課程に在籍中の2011年、Shannon Lab株式会社を立設立。これまでの研究成果や技術を生かして、ノイズ環境でも音声認識と対話できる「人工知能キャラクター優子ちゃん」「ノイズキャンセルマイク」の開発を実現し、高齢者施設でのAIの本格導入に向けて日々奮闘している。2018年2月には、「誤解だらけの人工知能(光文社新書)」を出版。

介護業界で深刻化している人手不足の問題

介護の業界では、人手不足が深刻化。厚生労働省がおこなった「職業安定業務統計」によると、2025年には、37.7万人の介護人材が不足すると予想されています。55万人だった介護従事者は、2013年には171万人と確実に増えてはいるものの、現場に必要な人材が追いついていないのが現状です。

介護スタッフにとって、着替え、入浴、排泄などの介助は重労働。体への負担が重く、腰痛やヘルニアなどによって現場を離れる人も少なくありません。そのため介護現場では、外国人の介護職技能実習生を積極的に採用するなどして、人材確保に取り組んでいます。

AIが介護業界を救う可能性

こうした、介護業界の人手不足が深刻な社会問題に直面していることを受け、2017年6月に政府は、「未来投資戦略2017」を発表。「未来投資戦略2017」とは、AI(人工知能)などの革新的な技術をあらゆる産業や業界、社会生活に取り入れて、誰もが最適な健康管理や予防、ケアを受けられる体制づくりを進めるための施作です。

具体的な打開策のひとつとして挙げられたのが、これまで手作業で行っていた介護のサポート業務を、AIなどの介護ロボットに置き換えるというもの。こうした流れを受け、多くの企業では、介護業界でのAIの導入に向けて、さまざまな高齢者介護ロボットの開発に取り組んでいます。

AIの実用化によって実現できること

AI(人工知能)が介護現場に導入されることで、認知症患者の予防や改善に役立つと言われています。遠隔からの見守り、AIとの会話、入居者ひとりひとりの食事や薬の管理など、あらゆる生活面のサポートがAIで実現できるようになるのです。

医療や介護現場でのロボットの実装が進めば、介護スタッフひとりひとりにかかっていた負担を軽減することが可能になります。これまで、手作業でやっていた食事や薬の管理など細かい部分をAIで対応できるため、人手不足の解消が見込めるのです。

会話ができる介護Agentシステム「人工知能キャラクター優子ちゃん」

東京都中野区にあるShannon Lab株式会社でも、介護Agentシステム「人工知能キャラクター優子ちゃん」の医療現場での実用化を目指しています。しかし、介護現場ではまだまだ実用化が進んでいないのが現状です。

ーー「人工知能キャラクター優子ちゃん」とは、一体どんなサービスなのでしょうか?

田中さん:弊社が開発している「人工知能キャラクター優子ちゃん」は、音声認識が可能な次世代型介護サービスです。専用マイクをパソコンにつないで、タブレット上に表示されている優子ちゃんと会話をするだけで、施設入居者の安否や健康状態が、離れた場所からでも確認することができます。

ーー優子ちゃんは介護現場でどういった役割を果たすのでしょうか?

田中さん:大きな役割のひとつとして挙げられるのが、利用者の食生活や健康状態を優子ちゃん一台で管理できることです。「誰が」「何時何分に」「薬を飲んだか」「食事は摂ったか」といった内容を、優子ちゃんと対話しながら確認することができます。

また、集めたデータはシステム内で一括管理できるんですよ。だから、今まで職員が手作業でおこなっていた、書類作成や管理の時間と手間も大幅にカットできるようになります。

ーー利用者の情報管理にかかる時間が減れば、介護職員はより質の高い介護ケアを提供できるようになりますね。

田中さん:そうですね。「どの国の国旗でしょうか?」「日本の首相は?」など、日々の生活とは関係のない質問に答えていくだけで、頭の体操にもつながります。それに、出題するクイズは自由にカスタマイズできるので、質問がかぶることもなくゲームの一環としても楽しめると思いますよ。

ーーでも、それだけ便利なサービスが、医療現場で導入されていないのはなぜでしょうか?

田中さん:一番はコストの問題です。弊社が開発している「ノイズキャンセルマイク」は、大音量でテレビを流していても、掃除機をかけていても、きちんと音声を拾うことができます。特殊な音声認識技術を用いている分、開発するのにも膨大な費用がかかってしまうんです。

また、ベッドや車椅子といった福祉用具品のように、介護保険の対象にはなっていないので、導入する施設側もまた高額なランニングコストがかかる。こうした導入コストにおける問題から、医療現場になかなか浸透していないのだと思います。

ーーAIの導入が、介護職員の負担を減らせることは間違いありませんよね。それに、優子ちゃんと話をすることで、利用者にとっては「誰かがそばにいてくれる」という安心感もあると思います。

田中さん:はい。できるだけ介護職員ひとりひとりにかかる負担を減らして、且つ遠くに住む家族にも安心してもらいたい。それと、高齢者施設では、リハビリの一環や気分転換を目的としたイベントを定期的に開催していますよね。

そういった多くの人材が必要になるシーンでも、優子ちゃんをうまく活用できるよう、周囲のサポートや理解を得ながら施設での本格導入を目指したいと思います。あと少し価格の部分が改善すれば実用でき、より多くの方々に使っていただけるはずです。介護保険の申請をを一緒に手伝っていただけるような、介護系企業様を探しております。

介護ロボットの1日も早い実用化を

2013年6月、経済産業省と厚生労働省は『ロボット技術の介護利用における重点分野』を策定するなど、介護ロボットの開発支援も積極的におこなっています。

国の積極的な支援がありながらも、開発や導入コストの問題から、介護ロボットが現場で実用化されるまでにはまだまだ時間がかかりそうです。高齢化が進む社会で介護の需要が高まることが予想されるなか、1日も早く実用化に向けた仕組みづくりが必要なのではないでしょうか。

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